菅原卓郎 滝 善充 中村和彦 かみじょうちひろ

■菅原卓郎


――人の魂と魂がつながって大きな輪が生まれていくような、スケール感のある詞世界ですよね。

菅原: そうですね。スケール感は、「世界」とか壮大な言葉で広げるんじゃなくて、シンプルな言葉で広げたいなと思ってました。自分が立っている地面は、普段は家やビルで隠れているけど、本当は、遠くにあると思っていた場所とも地続きになっている。ちゃんと周りを見てみたら、自分がつながっているものには、他の人もつながっていたんだなって。曲を聴いてそんな風に感じる歌詞になったと思います。

――《手も足も出なくても歌があるぜ》っていうダイレクトなメッセージもありますしね。

菅原: うん。今回はメッセージしようと。その前の段の《でたらめな時代に立ち向かう》っていう時に――暴力とか、フィジカルで激しいもので立ち向かうわけじゃなくて。でたらめな時代を作っているのは、格別でたらめなわけじゃない人間の、ちょっとした間違いやすれ違いや、思い込みの積み重ねなんじゃないかって。誰もが基本的には「正しいことをしよう」と思っているとして、、でも、それが掛け違っておかしなことになっていく。身近な人間関係から、大きいところは原発事故まで、出発点は同じだと思うんですよ。これは「強すぎる弱さとの戦いで」っていう歌詞に続いていくんだけど、掛け違っていることが分かっているのに動けないことが、弱さじゃないかと。どんな人でも「弱さ」を持っている。「強いだけの人」も「弱いだけの人」もいなくて、でも、「弱さ」そのものに強弱がある、って考えたんですよ。そして「弱さとの戦い」だから、手足を振り回すだけじゃダメで、その時こそ歌の出番だぜ、っていうことなんですね。

――内面的な部分での力強さが、そのままこの曲のスケール感を作ってるところはあると思いますね。

菅原: 10周年で新曲を出すことを決めた時に、無理してメモリアルぶって曲を書いたりメッセージする必要はないよってみんなで話したんですね。でも、書き始めたら、そこを完全に無視するわけにもいかないなと。無理矢理でっち上げた感じじゃなくて、伝えられるものがあればいいなと思って、歌詞を直していったら……「あ、俺はたぶんこれ、メンバーに向けて歌ってるな」って。種明かしがないと気付かないかもしれないけど、そのまま書こうと思いました。この狙いが間違いじゃなかったら、4人で演奏した時に、ライブを観てくれてる人にも、たまたまラジオで聴いた人にも真っ直ぐ伝わっていく気がしたんですよね。で、いざ書いたら――和彦とかみじょうくんに一緒に見せたんですけど、「おお、よくなったじゃん!」みたいな。メンバーからいい反応が返ってきて「おお、うまくいったな、しめしめ」って思いましたね(笑)。

――そういう歌詞によって、歌としての完成を見た曲ですね、これは。

菅原: そうですね。最終的には「できるだけたくさんの人に聴いてほしい」っていう気持ちは常にあって。でも、そのための強いメッセージを発するには、近い人に向けなきゃダメなんだ、っていう気がすごくしたんですねて。伝えたいって思った相手に伝えられないで出会ったこともないたくさんの人に伝わるわけないなって。今まで、俺が書いてきた歌詞はそういう感じじゃないから。「なるほど、みんなこういうことしてきたんだな」って思いましたよね(笑)。

――(笑)。そういうふうにシフトチェンジしたきっかけは何だったんですか?

菅原: 始めから「世界」みたいな大きい言葉で描いていくことに、単純にしっくり来なくなっちゃったんですよね。ノートに書いたアイデア見てたら、「なんで俺、こんな回りくどいこと言ってんだろ? もっと簡単に言えるのに」って思って。それで考えた先にあったのが、「近い人に伝える」ことをやってみようと。なんだよ俺、100万枚売れてるバンドでもあるまいし、って。一個一個をないがしろにしたら、そりゃあ広がってはいかないよなあって。もっとしっかりつながりたいっていうか。曲もそれを求めていると思ったし。

――途方もなく壮大なイメージを死に物狂いで追求するところに、9mmなりのロマンはあったと思うし、たくさんの人に自分たちの音が届いているという状況もあるわけですけど。その、自分たちの音が届くエリアの中に、今は血と情熱を通わせようとしてるっていうこと?

菅原: そうですね。聴いた人たちに向かって、「これは俺たちみんなで共有していいものなんだ」っていう気持ちですね。この音楽を、音源で聴くこともライヴで演奏することも含めて、俺たちみんなで遊ぶものだぜ、っていう感じかな。でも、「俺たちの歌なんだぜ」って言いたいんだけど、そのまま歌っちゃうことは何か違うなって感じていて。今までそこはずっと迂回し続けてきたけど、だんだん「別にいいんじゃねえか?」っていう気になってきましたね (笑)。そういう気分が徐々に生まれてきていて……もちろん今まで作ってきたものがダメなわけではなくて、自分が回りくどくしていることが面白くなくなってきた、ってことなんですよね。

――この曲ができたことで、これからできてくる9mmの音楽には、今までとは違った血の通い方をするんじゃないかっていう気もするし。今までの曲も含めて9mm全体のアップグレードにつながると思いますね。

菅原: うん。「生命のワルツ」のおかげでで、他の曲たちが自動的に更新されるっていうのはありますね。「こういうことを言ってるやつらが書いてきたものなんだ」っていうことで、「なるほど、辻褄が合うな」って。それでこの曲もツアーが終わる頃には、すっかり馴染みの一曲になっていると思います。


■滝 善充


――9mmの存在感と今のモードをぎっちり凝縮できた、攻撃的なシングル曲ですよね。

滝: そうですね。10周年に入ってベスト・アルバムとか、ベスト・アルバムのツアーが決定して。だいぶ早い段階から話としてはあったものなんで。今年に入ってから「生命のワルツ」は作ったんですけど……10周年で腰を据えそうなモードだからこそ、新しい、今までの9mmでは成し得なかったレベルのアレンジメントっていうことまでやっちゃおうかなと思って。「浮かれてんじゃんねえよ」っていうのでもないけど、いつまでも攻めるモードなんだぞっていう。逆に、落ち着きそうだからこそ、「そういうバンドじゃないんだぞ」っていうのを、自分でも思いたかったし、9mmに関わってるスタッフやみんなにも思ってもらいたかったし。挑戦的な姿勢を絶対持ってなきゃいけない、何なら今いちばん強く持たないと、本当に落ち着いちゃうよ? 普通のバンドになっちゃうよ?って思ったのを曲にしたようなところはありますね。まあ、良かったのは、去年も9周年のアニバーサリーをやって、その時に散々インタビューなどで昔を振り返るっていうことがあったんで(笑)。逆に割り切りよくスタートできてますね。

――曲を作る上でのキーワードが「高速道路」だったそうですけど?

滝: そうそうそう。メンバー同士で曲を作ってきた成果を出し合う、選曲会みたいなのがあって。2?3曲用意してたんですけど、まあどれも今までと同じぐらい感じの曲――自分らしい感じで普通に書いた曲と、前から作ってた曲と、合わせて持っていこうと思ってたんですけど、その前日に「あと1曲ぐらい、時間あるうちに作っちゃおうかな」って思って、マネージャーに「あと1曲速攻で作るんで、何かお題ください」って言ったら、「高速道路をぶっ飛ばしてるくらいの爆走感」みたいな感じのお題が来て。「あ、それなら得意分野だ!」と思って、それこそ2?3時間くらいで9割5分くらい完成したものを作ってみんなに聴かせた感じですね。

――その「爆走感」を3拍子の曲で表現するのは独特ですよね。

滝: そうですね(笑)。もちろん最初は、「疾走してる感じ」って言ったら、普通にドラムがスラッシーで、アップテンポな曲、っていうのは誰でも思い浮かぶじゃないですか。でも、ギターを弾いてたら……自然と3拍子のフレーズを弾いてて。「これ、実はちょっと新しいんじゃないのかな?」って思い始めて、パソコンの設定画面を「4/4」から「3/4」にして一緒に弾いてみたら、「やっぱりこれ新しい!」って。すごく良いものが降りてきた感じがしましたね。

――「Wanderland」「命ノゼンマイ」みたいなヘヴィ系3拍子の曲とも全然違いますしね。

滝: 全然違いますね。まあ、たとえば「Wanderland」とかは(指の)ポジションとかも似てるんですけど、世界観の取りどころが俺の中でははっきり違ってて。「Wanderland」はかなり未来的なアプローチにしてあって。「命ノゼンマイ」だったら、とりあえず日本じゃないような感じに持っていってて(笑)。で、「生命のワルツ」はもっと筋肉的な、80年代メタル/ハードコア、パンテラよりちょっと前ぐらいの、スラッシュ・メタル黎明期のワクワク感みたいなところが出てくるなと思って。今までだったら「ちょっとやめとこうかな」っていう、えげつない系のフレージングも、あっさり入れちゃいましたし。そういう中で、今までやらなかったようなところまでやれたなって。ドラムとかギターも、今までとは難しさのレベルが違うくらい難しくて。そういう意味でも、ワンステップアップが見えないと、今はダメなんじゃないかなって。

――卓郎くんのエモい歌詞が、そこに別の広がり感を加えているところもあるし。

滝: そうですね。そういう男臭いところがあってよかったなと思うし。そういうふうに男臭く響くような歌詞も、今までさほどなかったような気もするから。そういうところも新しいと思うし。もちろん、この男臭い曲にはぴったりですし(笑)。

――アコギ始まりからメタリックに展開するっていうイントロもドラマチックですよね。

滝: これも良いですよね。もともとの9mmだったら「これはねえだろ」になってたところですけど。アコギ10本重ねてあるんです、気合いで(笑)。イメージとしてはなんちゃってマンドリンなんですよね。ちょっと北欧チックな響きがあって面白いなあと思って。実は中身のほうが先にできていて、アコギはいちばん最後に取ってつけたような感じなんですよね。作っていったら、意外とサビがおっとりめで綺麗なメロディになって。「ああ、よかったな」と思って、うまくバランスを取っていけないかな、サビも2回しかないし、みたいな感じで。いつもだったら、サビのメロディをギターで派手にリフみたいに弾いて、みたいなのが多かったんですけど。それをやると、イントロのバーンって入る感じがなくなっちゃうなと思って。前にマンドリンを弾いてみたいなって思った時があって、その後忘れてたんですけど(笑)、「もしかして今じゃねえか?」って試しにマンドリン風にアコギを弾いてみたら、「これしかない!」って。

――でも、この曲に「イントロに何か欲しいな」っていう時に「マンドリンだ!」って思う人は他にそういないと思うし。一見、他のバンドだったら「これ入れたらロック的ではないんじゃないか」っていうものを取り入れて、でも最終的な着地点はロックなんですよね。

滝: そうですね、ロック。何ならちょっとロックンロール気味に、っていうところも考えていますね。いろんなものを入れますけど、やっぱりロックンロール落としにしないと……俺はそうでもないけど、他のみんながロックンロール育ちなんで。そういうところが綺麗にハマっていくと、9mmとしてボーンと前に出てくるアレンジになるんだなあって。適度にリフものですし、適度にわかりやすい歌モノですし。そういうところは曲がらずにありますね。でも、ライヴでやる時は、いつものギターじゃ全然パワーが足りないから、今ヌンチャクのギターのゴッチンさんから、ヌンチャク時代のギター(ESP ULTRATONE)を借りてきて、それを今ライヴで弾いてます(笑)。バイオレンスな感じの曲なんで、それぐらいハイパワーなギターを持ってこないと間に合わないし。そういうところも新しくていいなあって。


■中村和彦


――「生命のワルツ」、9mmの核心が全部詰まってるような曲ですよね。

中村: そうですね。初期の頃っていうか、(1st Album)『Termination』ぐらいまでは、殺伐とした雰囲気の曲が多かったと思うんですけど(笑)。パッと聴き明るそうな曲と見せかけて、実は殺伐とした空気も結構あったりして。「Talking Machine」とか「Beautiful Target」みたいな……爆発してるのはいつもそうなんですけど、なんか、写真に映したら白黒でした、みたいな雰囲気というか(笑)。「普通に撮ったはずなのになぜ白黒?」っていう、そういうすごさはありますね。

――スラッシュ・ビートだけど3拍子っていうね。

中村: その辺がすごく、9mmのキャラとすごく合ってますよね。洋楽だとあんまりなさそうだなあって。そこからちゃんと歌を聴かせるところに持っていけるっていうのは、なかなか他にはいなそうな――って自分で言っちゃうのも何ですけど、なかなかいないんじゃないかなあって思いますね。いろんな要素を取り入れてはいるんですけど、「この瞬間だけメタル」とか「この瞬間だけワルツ」とか、そういう取り入れ方だから、最終的にはソリッドな印象が残るんだろうなあって。いろんなものを取り入れるにしても、レッチリとかレイジみたいに、8小節の中にファンクとかラップを混ぜるんじゃなくて、「この8小節はロックンロールだけど、この8小節はメタル」みたいな(笑)。そういうキャラがバチバチッと入れ替わるのが9mmだから。その辺が面白いんだと思うんですよね。

――ヘヴィだけど、すごくポジティヴなエネルギーに満ちてますよね。

中村: そうですね。それはまあ、歌詞がそういう感じなのかなあと思いますね。

――卓郎くんは「メンバーを思い描いて歌ってる」って言ってましたけど。

中村: そう言われると……恥ずかしいようなところはありますね(笑)。卓郎さんの歌詞は、ストレートに何かを言うんじゃなくて、「もしかしたらこういうことなんじゃないの」って、聴いた人に自分で答えを導き出させるようなところがいいと思うんで。直接的にメンバーのことを言ってるような歌詞ではなくて、普通に前向きなエネルギーに満ちあふれた歌詞として聴けると思うし。そういうところがすごくいいと思うんですよね。

――中村和彦視点での、「生命のワルツ」のいちばんのツボは?

中村: 意外とやってなかった曲中のドラム・ソロかもしれないですね。あんだけ派手なセット組んで、プレイもとにかく激しいドラマーですけど、ドラム・ソロってあんまりなかったなあと思って……不思議な感じですよね。ドラム・ソロやってる感じはすげえイメージできるのに、実はそんなにやってないっていう。

――レコーディングで和彦くん的に苦労した点は?

中村: それが意外とないんですよね。曲自体が複雑ではあるんですけど、プレイが大変だったっていうことはなくて、スムーズにできたので。逆に、周りのことを考えて弾いてたなっていう感じですね。それこそ「ドラム・ソロ意外とやってねえな」とか――意外と気づかない所だと思うんですけど(笑)。歌詞のことも、「これはこういう歌詞か」とかあんまり考えたことなかったですけど。興味がなかったわけではないんですけど、自分のことばっかり必死に考えてたっていうか。でも今は、自分のやることを、あんまり難しく考えないでやれるようになってきたんで。

――このジェットコースターみたいな曲をスムーズに受け止められてるっていうのは、やっぱりバンドとして、和彦くん自身として、一段先に進んだんだと思うし。だからこそ、他のメンバーが考えてることにも意識を向けられてるわけだろうしね。

中村: うん、そうですね。レコーディングの時はそんな感じですね。でも、ライヴの時はだいぶいっぱいいっぱいになるんで、そこは全然違うところなんですけど。激しい曲は激しく演奏するっていうのを、ライヴでは強調してるんで。ドラム・ソロしてる時に煽りまくるとか(笑)。そうやって、だんだんライヴで曲が進化していくと思うんで。今はその段階だと思ってますね。

――この10年間で、自分自身でいちばん変わったことって何だと思います?

中村: 何だろうなあ……自分でアイデアを持ってきたり、曲を作ったりするようになってからは、自分が作ってない曲とかでも、自分らしいところを突っ込まないと9mmにならないな、っていうか。自分のことも大事にするっていうか。自分をちゃんと出さないと、っていう意識は出てきたかもしれないですね。昔の、久しぶりにやる曲とか、CDと全然違うフレーズで弾いてたりするんですよね。より今の自分っぽいフレーズを、っていう。まあ、単純によく覚えてないだけっていうのもあるんですけど(笑)。そういうアレンジ力とか、昔はできなかったことも今できるようになってたりするし。単純に上手くなったっていうのもあるし。メンタルっていうか、考えてることが昔とは違う、っていうのもありますね。

――フラットに昔の曲と向き合って、全然違うフレーズが出てくるっていうのは面白いですよね。

中村: 「Punishment」に至っては、毎回違いますからね、弾いてる内容が。ほんとにその場の思いつきでしかないし。弾きまくってることもあるし、弾かないこともあるし(笑)。そういうふうに、その場で選べるようになってきたっていうのは、確かに変わったところですね。


■かみじょうちひろ


――「生命のワルツ」、9mmの10周年にふさわしいシングル曲になりましたね。

かみじょう: 候補曲は何曲かあって。ハッピーな曲で行くのか、わざと皮肉っぽくグジャーッとしたやつがいいのかとか、いろいろ意見はあったんですけど……今年音源として発表する新曲としてはこれしか出ないので、「だったら景気よく、今の9mmを象徴できる曲を」っていうことで、これが選ばれました。メンバー、スタッフでああだこうだ話した結果、「これを打ち出すのが面白い!」っていう意見になりました。

――これまでの「ヘヴィ系3拍子」のどれとも違う、3拍子系のスラッシュ・ビートの曲ですけども。

かみじょう: 8分の6拍子、しかもスラッシュってあんまりないですよね。滝は曲に関して「高速道路をイメージして書いた」って言ってました(笑)。なので、言われてみれば確かに、スピード感ある感じ、首都高バトルな感じですよね(笑)。曲を書くにあたって、コンセプトとかモチーフがあると書きやすいので、確か、滝がマネージャー陣と話してる時に「何かネタください」って言ったら「高速道路のイメージで」って返ってきて。「それいただきます」みたいな感じだったらしいですね。僕も何曲か曲を書いてますけど、コンセプトはそういう、ブレた時になぞらえる芯となるのでがあるとすごくラクですので。むしろ、コンセプトがないと書けないぐらいだったりしますね。いつも同じ曲になっちゃうとか。だから、この曲でゆっくりになってるところはたぶん……サービスエリアに入ったり、渋滞したり、いろいろあるんでしょうね(笑)。

――(笑)。そこに卓郎くんの、根源的でエモーショナルな歌詞が乗っていくっていう。

かみじょう: そうですね。僕はもっと、卓郎の内側から出たような発言が面白いかなと思っているんです。菅原卓郎っていうフィルターを通した結果、ある事象を見て「僕はこれをこう思うんだ」みたいなことを言ったほうが面白いんじゃないかなと思うんですけど……なんてね。

――(笑)。

かみじょう: でも、最近の卓郎くんは……その「卓郎フィルター」が出てて面白いと思いますね。たとえば、卓郎は《強すぎる弱さ》とか、相反する2つをつなげてみるようなことをよくやるので。対極図っていうか、陰と陽みたいなのがあの人は好きなので――と俺は勝手に思ってるんですけど。Cメロの後の、《勝ち負けを決めさせない》、その後の《裏表》とか。こうやって対極させるの好きだなあ、といつも思ってます(笑)。

――今回は結構ドラム・フィーチャー感ある曲じゃないですか。

かみじょう: ありますね。今となっては叩けるようになったんで簡単ですけど……スラッシュ・ビートなんてもちろん4分の4拍子が当たり前なので、その感覚で叩くと、意味がわかんなくて(笑)。おまけに、ギター陣のタイミングがわかんなくて、結構苦労したんですよ。普通だったら、スラッシュだとドッタン、ドドタン、ドッタン、ドドタンみたいな感じなんですけど。それが今回はドッタン、ドッタン、ドドタンで、最後はドドドドドドってなっていくっていう(笑)。考えながらやってくと結構パニクりまして。身体に入ってないと、気持ちいいビートが打てなかったんで。今となってはすげえラクですけど、始めは結構苦労しましたね。「こんなひねくれた、へそ曲がりなことやりやがって。面白えじゃねえかチクショウ!」っていう(笑)。

――まさに同じようなことを、僕もライヴで初めて観た時に思いました。

かみじょう: イントロも、音源ではアコギでやってますけど、ライヴでは――観ていただいた通り、別アレンジでちょっとしっとり始まるので。しかも、始めはドラムだけで入ってるから、初めて観るお客さんは何拍子か理解できないかも。これ、ノれるのかノれないのか?とか、「カモメ」みたいなしっとり系なのか?って。で、その後1分ぐらいして裏切る、みたいな感じで。そこからみんな「あ、激しい曲なんだ」ってノろうとするけど、ノりにくいし、展開もわからないから、しばらくポカンとしてましたね(笑)。

――しかも、「高速道路」っていうお題で3拍子が出てくるっていうのは不思議ですよね。

かみじょう: なんか、「面白いことをやる」とか「変なバンドでいたい」みたいな思惑があるので、当の本人たちは。そういったセレクトをした結果だと思います(笑)。

――それが最終的に、ロック・バンドとしてのソリッド感に落とし込まれていくのが、9mmの面白いところで。

かみじょう: まあ、俺が曲を書いたわけじゃないから言うけど、そういうのがセンスなんだと思いますね。なので……すげえなあって。敵にならなくてよかったなあって(笑)。「生命のワルツ」は、これまでの延長線上にありそうなんですが、若干飛躍もある気がして。「10周年記念シングル」とか謳ってませんけども、やっぱりそういうタイミングで出るような曲は、嫌でも意識しますし。大事な曲になりましたよ。


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